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「ったく…なんで俺が…」
あの後、直樹に頼まれた事。
それは依頼人の夫の身辺調査だった。
俺はあくまでサポートだと話したはずなのに、あいつは他にやることがあるとかで今日だけ頼むとお願いされた。
嫌々ながら、弓永晴太が働く会社のあるビルで張り込みをしていた。
「お、来たきた。」
ビルの喫煙スペース。
このビルで働く社員は、みんなこのスペースで一服をするようだ。
ご主人はタバコを吸うという情報を得ていた為、社内で探り入れるならここが一番手っ取り早いと思って張り込んでいたが
どうやらビンゴだったらしい。
「鼻の下伸ばしちゃって…女と連絡でも取りあってんのかね」
弓永晴太が喫煙スペースから出てくるタイミングを見計らって、肩をぶつける。
「あ、すみません」
「いえ、こちらこそ」
ぶつかった拍子にうまくスマホを落としてくれたため
俺の持っていたダミーのスマホとすり替え、弓永に渡した。
「ちょっと借りますよ。あとで返しに行きますね」
誰もいない廊下に向かって一言呟き、トイレに駆け込んだ。
案の定ロックがかかっていた為、用意していたパソコンにケーブルで繋ぎロックを解除する。
「ふーん、真っ黒じゃん。やっぱりさっきにやにやしながら見てたのは、不倫相手から送られてきた※NEIL(ネイル)を見てたからってわけね」(※NEIL…最近流行りの連絡ツール)
内容はとても言い逃れできないようなものばかりだった。
不倫相手と旅行に行った時の写真や、二人の食事の様子等
浮気を証明するデータは、不用心にもスマホの中にたくさん残っていた。
それらを全てコピーし、パソコンの中に移す。
あとはホテルに行ってる写真なんか撮れれば完璧、なんだが…
「…やっぱ、おかしいよな…」
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