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「みーつやさんっ」
帰り支度の最中、直樹が嬉しそうに俺に近づいてくる。
「何だよ」
「今日お家行きますね!」
「今日はダメ」
「えー!何でですか!?せっかく三ツ谷さんの好きな餃子作ろうと思ったのに…」
「それはまた今度な。例の依頼人の件で進展あったから、調べにちょっと出るんだわ。わりぃな」
「ちぇー…じゃあ明日は?」
俺が弱いと知ってか知らずか、直樹はお願いをする時たまにこうやって涙目になる。
はぁ、と軽くため息をつき直樹の頭を撫でる。
「わかったよ、じゃあ明日な」
「はい!」
直樹に尻尾がついてたら、今確実に尻尾振ってるだろうな。
そんな事を思いながら俺も笑い返し、事務所を出た。
■
「ここだな…」
雄一から教えてもらったバーを見つけ、恐る恐る扉に手をかける。
店は予想と裏腹に大通りのわかりやすい場所にあり、中に入るとかなり賑わっていた。
どうやらテーブルとスタンドと両方あるようだが、どちらも人がいっぱいで俺は入口で足止めをくらってしまう。
「いらっしゃいませ、1名様ですか?」
「あ、はい」
「ではこちらへどうぞ」
ウェイターに案内されるがままについていくと、入口からは見えなかったが奥に空いているテーブル席があったようだ。
「お飲み物はいかが致しますか?」
「あー…じゃあ、とりあえずモヒートもらえますか?」
「かしこまりました、少々お待ち下さい」
ウェイターが去ったあと、まだ入ったばかりだというのにどっと疲れがきた。
(こういう場所慣れてねぇんだよな…)
今日は探りを入れにきただけだし、とりあえず一、二杯飲んで店内を回ろう。
そう考えていた時、青年が俺の横に腰かけた。
「おにーさん見ない顔だね。ここ来たの初めて?」
「え、まぁ…」
「ふーん、誰かの紹介?」
「え…」
何となく
確証はないが
探偵の感ってやつなのか、全身が今だと叫んでる。
ここが、探りを入れる絶好のタイミングだと。
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