第2話―嫉妬―

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「みーつやさんっ」 帰り支度の最中、直樹が嬉しそうに俺に近づいてくる。 「何だよ」 「今日お家行きますね!」 「今日はダメ」 「えー!何でですか!?せっかく三ツ谷さんの好きな餃子作ろうと思ったのに…」 「それはまた今度な。例の依頼人の件で進展あったから、調べにちょっと出るんだわ。わりぃな」 「ちぇー…じゃあ明日は?」 俺が弱いと知ってか知らずか、直樹はお願いをする時たまにこうやって涙目になる。 はぁ、と軽くため息をつき直樹の頭を撫でる。 「わかったよ、じゃあ明日な」 「はい!」 直樹に尻尾がついてたら、今確実に尻尾振ってるだろうな。 そんな事を思いながら俺も笑い返し、事務所を出た。 ■ 「ここだな…」 雄一から教えてもらったバーを見つけ、恐る恐る扉に手をかける。 店は予想と裏腹に大通りのわかりやすい場所にあり、中に入るとかなり賑わっていた。 どうやらテーブルとスタンドと両方あるようだが、どちらも人がいっぱいで俺は入口で足止めをくらってしまう。 「いらっしゃいませ、1名様ですか?」 「あ、はい」 「ではこちらへどうぞ」 ウェイターに案内されるがままについていくと、入口からは見えなかったが奥に空いているテーブル席があったようだ。 「お飲み物はいかが致しますか?」 「あー…じゃあ、とりあえずモヒートもらえますか?」 「かしこまりました、少々お待ち下さい」 ウェイターが去ったあと、まだ入ったばかりだというのにどっと疲れがきた。 (こういう場所慣れてねぇんだよな…) 今日は探りを入れにきただけだし、とりあえず一、二杯飲んで店内を回ろう。 そう考えていた時、青年が俺の横に腰かけた。 「おにーさん見ない顔だね。ここ来たの初めて?」 「え、まぁ…」 「ふーん、誰かの紹介?」 「え…」 何となく 確証はないが 探偵の感ってやつなのか、全身が今だと叫んでる。 ここが、探りを入れる絶好のタイミングだと。
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