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リザードマンでもリザードゥマンでもどっちでもいい。
パイナップルでもぱいなぽぅでもどうでもいい。
期待した柔軟さを真っ向から打ち砕かれた俺は炎を防ぐため再び乙女の恥じらいポーズを取ったが、そんな姿に呆れるように尻は言葉を発した。
「・・リザードゥマンの倒し方。それは正面から粉砕あるのみです」
その言葉が終わる前に、いつぞやのデジャヴのように背中が熱を集める。
そして最早何でもありになりつつある頭の剣山が放電を始め、全身が紫電で覆い尽くされる。
嫌な予感がする。
嫌な予感しかしない。思わず
「ちょっ・・!!」
と口を開きかけた瞬間、
「発射」
というにべもない二文字と共に、俺の体はまたしても自分の意思とは関係なく前方へと撃ち出された。
ーーその後に続くは、悲鳴、激突、爆裂、突破という刹那の展開。
こうして俺は全くとして勇者らしくない、そしてパイナップルとは全く関係のない
「電撃体当たり(正式名称はアルティメットパインスパークというらしい)」
という決め技にて、何とか町に迫る脅威を打ち破る事に成功したのだった。
ーーそれからきっかり1日半の後。
「町を救った英雄にして、史上最強の戦士・ぱいなぽぅ」
という、話が盛り過ぎな肩書きに収まってしまった俺は、平穏を取り戻した町を後にしていた。
俺自身は何もしていないので、その肩書きは死ぬほど大それたものだったが、御歳100を軽く超えているらしいこの町の長老が
「此度の事、感謝致しますぞ・・
町を救った英雄にして・・
ええと・・
・・痴情最強の変人・ぱいぱいよ」
という、あまりにも破壊力のありすぎる右ストレートを繰り出してきたため、俺が抱いていたセンチな気分など一発で吹き飛ばされてしまったのだが。
正直、俺がなぜこの世界に喚び出されたかはわからない。
でも今は、自分に出来る事を一つずつやっていこうと思う。
この旅がどんな結末を迎えるかは分からないけれど・・俺が旅を続ける事で、この世界に住む人々の暮らしが少しでも守れるのなら。
「ヘイ、尻」
「御用は何ですか。・・ぱいぱい」
長老が投下した爆撃以来、なぜか《俺=ぱいぱい》登録してしまった不思議な鎧と共に、俺は新たな一歩を踏み出す。
未知なる旅に対する不安と希望。
そして・・
「(俺はこのまま《ぱいぱい》と呼ばれ続けるのか?)」
という疑問を胸に抱きながら。
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