第1章

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「なんっっでやねんッッ!!」 鎧と俺、仲睦まじきダブルぱいなぽぅ。 お笑いの聖地出身でなくとも、そうツッコまざるを得ないこの展開。 呪いか。 これが呪いというものなのか。 職業に関しては百歩譲るとしても、 「ああ、君の名前も今日から《ぱいなぽぅ》だからね?だってもう、見た目からしてアレじゃない。プスッ(←失笑)」 とでも言いたげな雰囲気すら漂う強制改名。 全国で一番多い名字から、間違いなく全国で一番少ない(っていうかあったら怖い)名前に転落した俺は、苛立ちのあまり頭を掻きむしった。 否、掻きむしろうとしたら、光輝くパイン兜の表面が 《ケシケシケシケシケシケシ》 と情けない音を立てた。 「(・・とにかく、こうしていても始まらない)」 頭を一つ振って考えを改め、俺はテーブルの上にワールドマップを広げる。 この地図を見る限り、旅の最終目的地と思しき《魔王の居城》と直球で記されたポイントは、ここから遥か遠く離れた最果ての孤島にあるらしい。 向かうなら船か・・それともファンタジック路線で行くなら、龍に乗って飛んでいくとか。 頭の中に、猛々しいドラゴンの背に乗り、悪の巣窟を目指す自分の姿が描き出される。 普通ならば最後の戦いに赴く、クライマックスシーンというヤツだろう。 だが実際は、陽の光を全身で反射し、 「ご来光でござる」 と言わんばかりに天空を飛翔する俺、即ちぱいなぽぅ。 ・・シュールだ。 ・・・シュールすぎる。 未だ嘗て、こんな自己顕示欲の塊のような勇者が存在しただろうか。 俺の中にある勇者像とはあまりにもかけ離れた妄想に囚われ、再び頭を抱えそうになった俺に、おずおずと声が掛けられたのはその時だった。 「・・あのぅ・・ご注文は・・」 「・・・あ」 忘れていた。 飲食が出来る店に来て、何も注文する事なく居座り続けているのは確かに迷惑だろう。 この世界での相場がわからないが、この鎧と共に得た金貨があれば飲食代としては充分のはずだ。 ・・でも。 「す、スイマセン、あの・・俺、すぐに出ますから」 「・・え?」 呆気に取られた様子の女性を尻目に、俺はそそくさと荷物をまとめる。 そしてペコリと頭を一つ下げると、何となくいたたまれない気持ちを抱えながら、逃げるように酒場を飛び出した。
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