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「ハラ・・減ったなぁ・・」
折角情報と食糧を求めて酒場に赴いたのに、何一つ得る事なくすごすごと引き揚げてきた自分に情けなさがこみ上げる。
だが、流石にあの微妙な空気の中で悠然と食事が出来る程、俺の神経は太くはなかった。
《ごぎゅるるるぅ・・》
そんな俺を責めるように、腹の虫までもが抗議の声を上げる。
闇雲に歩いてたどり着いたのは、町からほど離れた森の中。
飲み水は川が近くにあったおかげで確保できたが、食べ物となるとそうはいかない。
完全に陽が落ちた世界の中でも、幸か不幸か、歩く発光体と化しているおかげである程度の視界は確保できるが、目に止まるキノコやら何やらが食べれるものかどうかがわからない。
ならばと思い立ち、近くをうろついていた鹿のような獣を追い掛け回してはみたものの、凄まじい形相で逃げられてしまった。
まぁ確かに漆黒の闇の中、光るパイナップルがいきなり襲いかかってきたら俺でも逃げる。
ホラージャンルで一本短編が書けそうな程の恐怖だ。
逃げ出したのは、強者に対する野生の本能が警鐘を鳴らしたというよりは、単に迫りくる不審者から逃亡を図ったに過ぎないのだろう。
・・自分で言っててペッコリ凹む話ではあるけれど。
「はぁ・・何か疲れたな」
この世界に来てからというもの、ビックリする程何もしていない気がするが、この言い様のない徒労感は何なのだろう。
思わず口を衝いたその言葉と共に、崩れ落ちるように身を横たえようとした俺だったが、頭からワサワサと伸びている《房》という名の剣山が、近くにあった木の幹に突き刺さった。
頭突きによる殺傷を目的としているのか、やたら鋭利なソレは深々と幹に食い込んでいる。
暗闇の中、他人様には到底お見せできない身悶えの末、《それでもカブは抜けません》ならぬ《それでもパインは抜けません》な状況を脱した俺は、短時間で倍増した疲労感を抱えて今度こそ大地に倒れ込んだ。
「この鎧、もうイヤだ・・」
この世界に来たのが避けられぬ必然だったとするならば、せめてあのガチャだけでもやり直させて貰えないだろうか。
貰えるアイテムが、《やくそう》でも《どくけしそう》でも《ポーション》でも文句は言わない。
むしろそっちの方がいい。
そんな愚にもつかない事をあれやこれやと考えていた俺は、瞼が次第に重くなり、いつしか眠りに落ちてしまっていた。
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