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・・頭が痒くなってきた気がする。
・・心なしかコカンのあたりも蒸れてきた気がする。
重い足音を響かせながら汗だくになって森を駆け抜ける俺は、行き場のない熱気に蒸し上げられつつ《ぱいなぽぅバイブル》なる書物を懐から取り出した。
「酢豚にパインが入っている事を、私は邪道だとは思わない」
誰から目線なのかよくわからない、そしてひたすらどうでもいい序文から始まるこの書物は、鎧に関する取扱説明書のようなものらしい。
手に入れた際ざっと目を通した所、この鎧には999もの特殊な機能が搭載されているのだという。
どれだけ急いだとしても、この速度では町へたどり着くには相当な時間が必要となる。
何とか少しでもその時間を短縮する術は無いものか。
そんな想いから忙しくページをめくっていた俺は、とある項目に目を止め・・
その機能を発動させるべく、半信半疑ながらもある言葉を鎧へと投げ掛けた。
「ヘ・・ヘイ、尻?」
Sir◯ではなく、尻。
発音は同じだとしても、誰が何と言おうともSi◯ i ではなく、尻。
なぜこの局面で尻なのかはわからないが、その言葉を受け取った鎧が淡い光に包まれる。
そして更に驚くべき事が起こったのは、その次の瞬間だった。
「御用は何ですか?」
パインが・・喋った。
「なるほど、君はアイPhoneならぬ・・パイPhoneという訳だね!」
等というツッコミをかます余裕もなく、俺は必要な機能ーー即ち《目的地への瞬間移動》の指示コードを伝える。
瞬間移動。
想起されるのはテレポート的な能力の発現。
だが俺はこの直後、この鎧の恐ろしさを身を以て思い知る事となる。
背中一面をすっぽり覆う、巨大なパイン。
今まで盾か何かだと思っていたソレは、てんとう虫の羽のように中央からぱかりと割れると、断面から青白い炎を噴き上げる。
背中から伝わる熱と、
《ゴッフワァァァ!!》
という、絶対に良からぬ事が起こりそうな予感しかしない駆動音に狼狽えまくる俺の耳に、モモ尻ならぬパイン尻の冷めた声が響いた。
「・・ジェットパインエクストリーム起動。これより目的地まで一気に飛翔します。では射出。」
問答無用。
バンジージャンプとかでありがちな
「Are you Ok !?」
「No!断じてNo!!please 待って!!」
的な展開すらなく地表を飛び出した俺は、その1秒後にマッハの壁を突き抜けた。
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