19人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「(もう少しマシな着陸の仕方はなかったんだろうか)」
夜空を切り裂く一筋のレーザーパイン。
それは町の上空に到達するや否や急激に角度を変え、町の入り口に頭から突き刺さった。
「目的地に到着です」
鎧から発せられる無機質なアナウンスが、垂直に直立したままの俺の耳をすり抜けていく。
これ程の衝撃でも首の骨が折れていないのは類い稀なる防御力の証明なのかもしれないが、こんな所でグーグルマップのピンのように突き刺さっていても仕方がない。
「好き!好きなの!もう絶対に離さない!」
と言わんばかりに大地に食らいつき、中々離れようとしない頭の剣山を無理矢理ひっこ抜いた俺は、町の内部へと足を踏み入れていく。
流石にノーダメージで済むはずもなく、ふらつく足取りと歪む視界。
そんな常ならぬ俺の目に映ったのはーー
今までの常識を覆す戦慄の光景だった。
「・・んだよ、これ・・」
《魔物の襲撃》という言葉を聞いた時、俺は異形の軍勢が大挙して町を襲っている光景を思い描いていた。
だが実際は違う。
町外れと言って良いこの場所からでもハッキリ見えるのは、中央広場を徘徊するたった一個の影。
だが三ツ又に分かれた巨大な銛。
長くせり出した口から伸びる牙。
そして3メートルはあろうかという巨躯でのし歩く二足歩行のトカゲを見た瞬間、俺は膝が震え出すのを抑える事が出来なかった。
「リ、リザードマンってヤツか・・?実物はあんなデケェのかよ・・!」
思わず体が後ろに下がろうとする。
だがそれを押し止めたのは、爛々と光る双眼が見据えている小さな影に気付いたからだった。
「子供・・!?」
絶対的な強者と弱者。
両者の距離はほんの10メートルも離れていない。
わずかに口角が上がったかに見えたトカゲの口が、ゆっくりと開いていく。
口内に踊る鮮紅。
それを認めた瞬間、俺は反射的に地を蹴っていた。
「トカゲが火ぃ吐いてんじゃねぇよバカヤロウ!!」
救出プランなどあるはずがない。
それでも目指す場所へと全力で突進し、子供とトカゲとの間に身を割り込ませた瞬間、炎の壁が真正面から襲い掛かった。
「ほぉぉうわぢぃぃ!!」
流石の防御性能と言うべきか、鎧の装着されている部分は迫る猛炎を完璧に弾いている。
だが・・だがしかしだ。
申し訳程度に露出している顔面部分は・・
思う存分に熱を感じているではないか。
最初のコメントを投稿しよう!