#1 はじまりの合図①

2/2
前へ
/11ページ
次へ
太陽が沈み、街が闇に染まりだそうとする時間 高級タワーマンションのある一室 パーティ会場のように煌びやかな装飾がされていたであろう部屋は、その煌びやかさを失いまるで幽霊屋敷のように静けさだけが漂っている。 有名作家が描いたであろう絵画が半分抉られたように消えていたり アンティークなテーブルも逆さまになり、その形を保てていなかったり しまいにはさっきまで豪勢に酒を呑み、意気揚々と騒いでいた男たちが今では床に倒れている。 そして部屋の壁にはいたるところ銃弾の傷があり、先程まで激しい戦闘があったことが分かる その床に倒れている男たちをよく見ると、皆胸にポッカリと穴が空いている それが何を意味するか、どうやってできたものなかは誰にも分からない。 いや、語弊があった。 彼しか分からないであろう。 全身黒で統一した装備を身に纏い、銀髪ストレートをなびかせその奥に見える漆黒の瞳は無情なほど冷たく感じるものがある。 そんな彼の目の前には、全身冷や汗をかいている中年で太っていて、いかにもヤクザのような男が苦しそうに悶えている。 そんな中年男に漆黒の彼は質問を投げかける。 「なぁ、アンタにとって、大切なものってなんだ…」 彼がなぜそんな質問をするのかは分からない。 質問をする彼の顔に表情は一切ない。 「ッェ!ウッ、この!クソムシが!」 中年の男は左手で右手を必死に抑えながら無表情な彼に反論する。 よく見るとその右手はなぜか手首から先がなくなっており、血が止まらないでいる。 「こんなことしてただで済むと思うなよガキィ!!」 中年の男は自分をこんな風にした彼に対し、心からの憎しみを言葉にしてぶつける。 しかし、彼は表情を変えずにこう言う。 「まぁ大した答えはないと思ってたよ。」 彼にとって中年の男が言うセリフは予想通りだったのだろう。 「…よいしょ」 そう言うと彼はすぐ近くに倒れている胸が空っぽの男の手から拳銃を拾う その拳銃を躊躇なく中年男の頭に向ける そして引き金を引く寸前、冷淡にこう一言 「これがはじまりの合図だ…」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加