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『ピーンポーン』
…
「誰だよ…こんな時間に…」
机の上の置き時計を見ると時刻は0:00となっている。
つまり今は真夜中だ。
こんな時間に配達が来るわけないし、考えれば誰がチャイムを押しているのかも大体わかる。
「どうせ、統士(とうじ)だろ…」
アイツは寝れないと俺の部屋に来てゲームをしやがる。
そして気が済むとすぐ寝る奴だ。
全く人の身にもなってほしい。
『ピーンポーン!』
それでもチャイムは乾いた音を部屋中に鳴り響かせる。
「うるせーな、俺は今絶望してるんだから1人にしてくれよ…」
その言葉も誰にも届かず消えていく。
しかし、今日だけは誰にも関わりたくなかった。
それほど俺自身のテンションが最低のドン底のレベルにあるからだ。
ふと立てかけてある鏡に目を向けると、垂れ目がさらに垂れている。
さらに一度も染めたことない黒髪天パも疲れているせいか少しカーブ強くなってる気もする。
「このままじゃアフロになりそうだな…ハハハ笑…」
『ピーンポーン!!
ピーンポーン!!』
俺の気持ちとは裏腹にチャイムは更に加速していく。
「あー!もう!うるせ!」
俺はもうこの世との繋がりを無くすため、最終兵器イヤホンを装備し、そして誰も自分に触れることができないよう鉄壁の掛け布団で全身をコーティングした。
『ピーンポーン…
ピ…ポ…ン…』
微かに耳にチャイムの音が入ってくるが、気にもならない程度になった。
「ふぅ…もういいや、寝よ…」
今日は気が張り詰めていたため、いつもよりも疲れた気がする。
そんなことを考えていると次第に意識が薄れていく。
意識を手放す前に、俺の頭の中には今日分かったことだけが浮かんでくる。
俺は…
凡人だったのか…
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