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バサッ!
意識を手放そうとした瞬間、俺の鉄壁の守り、掛け布団が勢いよく外された。
「藍疾(あいと)!アンタ寝るの早すぎよ!」
この声に俺は聞き覚えがある。
というより、この声とはずっと一緒にいる。
少し高めの声質、またSっ気のある声。
なんでこいつがいるのか謎ではあるが、来たら避けては通れない道だ。
俺は布団が外された後開けたくない瞼をゆっくり開ける。
映し出される光景には1人の少女がいた。
ロングで綺麗なブラウンのストレート。顔立ちもハッキリして整っているが、少し鋭い目つきが若干人を寄せ付け難いオーラを放つ。
両手には先ほど俺の装備品の掛け布団を持っている。
その姿をみて俺は自然と彼女の名前を口にしてしまう。
「智南(ちな)!…なんでおまえここにいんの?」
そう彼女の名前は花道 智南(はなみち ちな)
俺と智南は幼い頃から一緒に過ごしている。いわゆる幼馴染ってやつだ。
家が近所だったのもあるが、1番は親同士が仲良かったことがきっかけでもある。
まぁそんなことはどうでもいいが、なぜ智南がここにいるかが不思議である。
「なにがどうでもいいのよ」
俺の考えを見透かした様に智南が顔覗き込んでくる。
こいつはなんで俺の考えが分かるんだよ。
ときたまこうやって俺を動揺させてくるんだよな。ほんと、やめてほしい。
「べつになんでもねぇよ。てかなんでお前がここにいるのかが不思議なんだよ。ここは女子禁制の男子寮だぞ。どーやって入ったんだよ。」
そうここの部屋、いやこの寮は《第三魔法中央高等学校》三年生限定の男子生徒だけが住める寮である。
もちろん女子寮もある。
だがなぜ三年生だけかって?
それは学校の創設者が今年から三年生の代だけを親元から離し、一人暮らしをさせることで社会の厳しさを教えるためだとかなんとか…
そんなわけでそのルールがちょうど俺の代から始まったわけだ。
まぁ最初の一週間ぐらいははウキウキ気分で楽しんでいたが、今考えると家事とか死ぬほどダルいのが分かるよ。
なんならもう家に帰りたいぐらい…
「なんでアンタ、ホームシックな顔してんのよ?気持ち悪いわよ」
「う、うるせーよ!誰がママのとこに帰りたいだよ!」
早速俺の考えを盗んできやがった。
てか話が脱線しちまったじゃねーか。
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