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「3人とも同じ存在なの?」
「正確には違うと言えるな。なぜならば、僕と君とでは思考形態に若干の優劣があると考察されるからである」
ぼくと同じ顔をして、ずいぶんと難しい物言いをするヤツだな。ぼくは複雑な気分になった。
「言うならば僕は探偵役で、君はそれを引き立てるワトソン役であろうな」
「ワトソンって、ぼくは推理小説を読まないのに君はずいぶんと詳しいね」
「そこが君の劣っている証拠さ。君は寝ながらよくテレビを点けていたね。それで無意識が学習していたのさ」
「その無意識が分かれたってこと?」
「おそらくはね。それは次の答えを導きだす。ぼくを殺したのは、もう一人のボクだとね」
「4人目のボクが、ぼくを殺したと言うのかい!?」
「サバイバルに長けた、凶暴な精神を有するボクだな」
「どうしてサバイバルに長けていると思うの?」
「この矢さ」僕がそう言って死体から矢を抜いた。「僕たちが目を醒ますわずかな時間で、これを制作してのけたのだ。並々ならぬサバイバル術だよ」
ぼくにそんな真似は無理だ。工作や大工仕事は苦手なのである。
「そのボクが、なぜぼくを殺したんだい?」
「おそらくは、この島の物資だろうな」
僕がそう言って、この無人島をぐるりと見渡した。
大きな島だ。荒い波が打ち寄せる砂浜の向こうに、鬱蒼として緑の濃いジャングルが広がっていた。
「ここに救助が来るにしても、そう簡単には発見できないだろう。
それを考えた場合、島の物資を巡る戦いになるのは必至だ。いささか短絡な思考だとは思うがね」
僕が言う無慈悲な言葉を聞いて、ぼくは先の見えないジャングルを見た。
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