第1話 アーマーシステムの適合者

2/28
前へ
/147ページ
次へ
「かぁああ、いってえぇぇ……」  右手に未だ地味に残る痛み、そしてガンガンと頭に響く痛みが容赦なく攻めてくる。泉亮人はそんな二重の痛みに耐えながらふらふらと道端に足を歩ませていた。  ついさっきまで実験結果の代償としてベッドで気絶していた。目が覚めたら博士から「お前はバカだ。本当にバカだ。その結果はバカであるお前のせいで、バカだからこうなったんだ。さっさと解除するべきだったんだ、バカ」とまあ、バカバカと博士の言葉とは思えない言葉をひたすら並べて結果が報告された。というか、あれって実験の結果報告と言っていいのだろうか。 「くぅううう……」  歩くたびに脳に刺激が走り、ズッキーンと容赦ない痛みが突き刺さる。  亮人がこんな痛みをうけてヘロヘロになっていると言う訳だが、彼自身これが成り行き上、仕事だったりする。  亮人は現在、十九歳。本当ならば大学に行くはずだった。ところが、センター試験の数日前に事あってある事故にあってしまう。そのおかげで亮人は入院どころか、完全に意識を失ってしまった。  寝ている間にセンター試験は終わり、大学の前期試験、後期試験、仕舞いには何とか学生を入れたいと空いた席を埋めるお情け試験の期間さえ終わってしまい、目が覚めたころにはサクラさえ、散り始めていたというオチだ。  だが、亮人の父親はある巨大な会社、ボーダーラック社の社長を務めていたと言うのがあった。それゆえ、その父親からは大学に行けないならば就職しろとか、ついさっきまで寝込んでいたっていうのにやたら情けのない厳しさでここにいたる。  ちなみに、この会社、ボーダーラック社に就職していたのは父親が社長をしている会社であるため、つまり世間でいうところ、コネという奴で入社したと言う訳だった。亮人にとって気に食わない話なのだが。  では、一体、ボーダーラック社ではどんな仕事しているのかと言うと……。 「え!?」 「あ?」  
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加