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「おい……、おい……、しっ……り……ろ、しっか……しろ」
闇の奥で声が聞こえてくる。何故か体中が悲鳴を上げている気がするのだが、まて、さっきまで何をしていたっけ。たしか、ふらついてまな板に当たって。そう、ま……、まな……板……まな板……。
「まな板言うな――――!!」
「いってぇええ!?」
何かを叩く乾いた音とともに突如、視界が明るくなった。と同時に頬辺りがすごいひりひりする。訳が分からない。本当に訳が分からない。訳が分からないが、取りあえず目の前に誰かの顔があるのに気が付いた。中々焦点が合わず、何度も目を凝らしているとそのこじんまりした顔が。
「あっ、そうか! あの子!」
ぱっと亮人は起き上がると再びその子を見た。と、何故か、その子は後ろに下がり気味で警戒している。
「急に頭を上げるな。当たりかけただろ」
その言葉の意味が理解できなかったが、辺りを見渡して気が付いた。今、亮人はベンチに座っている。つまり、さっきまでベンチで横たわる亮人の顔をその子が覗いていたと言う訳か。
「確か……、俺、竹刀で脳天をぶっ叩かれたような……、いや、待て。まず謝るべきか……。その……、すみません。ちょっとふらふらしてて」
頭を掻きながらちょっとバツが悪くなり声が小さくなっていきながらでもなんとか声を選んで謝ってみる。てっきり、もう一発位お見舞いされるかと思ったのだが、意外にそうではなかった。
「いや……、あたしの方こそ……、すまない」
と、少し目を逸らしながらそう言ってきたのだ。
「まさか……、手加減した竹刀一発で気絶してしまうとは思わなかったのだ。悪かった。その……、やっぱり体調が悪かったのか? ふらふらしてたっていうのは?」
目を逸らし、ちょっと顔を赤くしながら淡々と話しているその子。亮人は確かに思った。
――何この可愛い生き物!?――
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