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近藤は兄──辰之助の後ろに控える鉄之助に向かって微笑んだ。 鉄之助はその視線に年相応の笑みを浮かべた。 「京での用事はもう済まされたのかな?」 「はい、おかげ様で」 「そうかい。ここ数日、鉄君の素振りを見させてもらったが、なかなか良い腕をしているね。辰之助殿は、剣術は?」 「私には才がないようで、全く振れません。刀の代わりに算盤を」 「そうですか。それはそれで安心ですな。私はそっちの才がからっきしでね、一任してしまっているよ」 後頭部に手を当てて恥ずかしそうにする近藤に、辰之助はどう答えればよいのかと困った。 しかし、強面の割に優し気な雰囲気を醸し出すこの男に対して安心と心地よさを感じ、無理して会話を続けようとは思わなかった。 それから当たり障りのない話が続いた。 障子近くに座している私はこの部屋の全体を見渡すように眺めていたが、辰之助の後ろに控える鉄之助の顔がどこか浮かないように見えて、首を傾げた。 すると、沖田が土方を一瞥し、何かの合図を送っていた。 それに土方は頷いたが、ただそれだけで、注意を逸らしていた沖田の方が行動を開始した。 「近藤さん、そろそろ刻限じゃないですか?」 「おお、そうだったね総司。すまない、今日も用があって、もう出なければならないんだ」 「私たちのことはお気になさらずに。お忙しい中ありがとうございました」 「また京に来る機会があれば、訪ねてくだされ」
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