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少しだけ、過去の話をしよう。これは、沖田に首筋を斬られたところから始まる。 激痛を感じるよりも、意識が一瞬飛ぶ方が早かった。 ほんの一秒にも満たない時間だったが、沖田はすでに背を向けて遠ざかり、そこでようやく痛みを感じ始めた。 流れ出る血の量に微かな恐怖を感じたが、予想の範囲外の声が聞こえ、勢いよくそちらへ目を向けた。 『梅、さん……?』 『朔様!! お身体…………は? 沖田様に斬られたように見えましたが、……大丈夫なのですか?』 顔面を蒼白にして駆け寄ってきた梅だったが、意外にもピンピンしている私の姿に目を瞬かせた。 それもそのはず、彼女は私の体の秘密を知らない。 斬られても刺されても死ぬことのない不死身の体。 それでも、血が足りなくなれば目眩はする。 ぐらつく頭を押さえつつ、上半身を起こして梅を見た。 『はい、大丈夫。梅さんは、何でここに?』 『芹沢様から、今宵は宴でお前は連れていけぬ。朔様のところへでも行っていろ、と言われましたので、離れで待たせていただいておりました。ですが一向にいらっしゃる気配もなく、いつの間にか眠りについていたのですが…………話声が聞こえまして、見に来たのです。そしたらお二人が争っておいでで……───』 『……どこから、聞いてたんだ?』 その問いに、梅の方が大きく震えた。 目を泳がせつつ口を薄く開いては閉じるを繰り返す。 五秒ほど経つと意を決したように私をしっかりと真正面から見据えて、ゆっくりと確かめるように口を開いた。 『芹沢様を、……殺す、とは…………本当ですか?』 ああ、やはり聞いてしまったのか、と私は心の中で呟いた。 そう口に出してしまえば肯定することになるからだ。 かと言って、そうではない、と嘘もつけない。自分はどう答えるべきなのか……───。
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