始動

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「くっ!」 詠唱なしの障壁を女は張る 「剣をバカバカ出した状態でいつまで持つかな」 その時イヤリングから声が聞こえる 「ウィル…聞こえる?」 ロザリィの声だ 「おお、良好良好、他の魔術の干渉もなくクリアだ」 銃撃音が轟く中ロザリィは聞く 「何か起きてるの?」 「ああ、赤いローブの二人組と現在交戦中、そろそろ離脱予定」 そう言いながらウィルは一歩ずつ下がって行く、一体倒した所でもう一体に殺られる事は目に見えている、撤退が得策だろう 「フラッシュの魔術手投げ弾を使って撤退する」 「わかった、気を付けて」 「ああ、心得た!!」 ウィルは剣をしまい手投げ弾に持ち変える、弾倉の弾が切れるその瞬間に手投げ弾を放り投げる 「ブースト」 そう言い後ろを振り向く、数秒間だけガスト状態になる魔術、ウィルにはこれが精一杯だ 次の瞬間辺りはまばゆい光に包まれた、少しの間輝き続け収まる頃にはウィルの姿はなかった 「時間だ…行くぞ」 懐中時計を男は見て言う 「あらあら、せっかくのいい男なのに逃げられちゃったわね」 少しの残念そうに女は言う 「ふ、悪い趣味は余所で言え、この屍姦女が」 「ふふ」 そう言うと2体のゴーレムは姿を消した ブーストの効力が切れ郊外を歩く 「追っては…来ないか」 安心するウィルはコックピット内で荒くなった息を整える、心音とゴーレムの機動音だけが妙に響いていた 「実戦馴れはしてるつもりなんだけどな…」 そう言っている最中イヤリングから声が響く 「ウィル」 「おお、ロザリィお疲れ様」 「終わったみたいね」 「ああ、何とか逃げ切った、てか追って来なかった」 少し歩くと二股に道が出来ている、そこには一本の木が生えていて馬車が停車している 馬車の運転席からロザリィが顔を出す 「遅い…」 「こちとらドンパチやった後だぜ、少しは労れよ」 ゴーレムを馬車の積む 「恐らくは、これ以上は戦闘にはならない」 ウィルは運転席に座りロザリィから手綱を渡された後、手綱を使い馬を前進させる 「そう…なら、このまま王都に戻っても大丈夫ね」 「ああ、やたらと時間を気にしてたからな…恐らくは組織的にネクロマンサーを殺し回ってたんだろうさ」 確実に殺すにではなく…ウィルはぽつっと呟く 「奴らの目的は何かを探し回っている」 「何かって?」 「いや、そこまでは分からないが…」
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