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「・・・・・・はあっ、はあっ・・・・・・。」
園庭にある、滑り台のしたに隠れた。かくれんぼの時も、ここによく隠れる。
「・・・おれ、なにしてんだろ・・・。」
ポロッと零れ落ちた言葉は、自分に返ってくる。
・・・・・・ホントは、分かっていた。
いおりといると、もっと強くなりたい、守りたいって思うし、
自分が泣かせたくせに、泣き顔を見ると胸がズキズキ、変な痛みに襲われて。なんとか笑顔になって欲しいって思う。
女の子たちに囲まれているのを見ると、
自分の方がいおりのことを知ってるのにってモヤモヤする。
こないだ、ご飯の時間にあかねとそうたが言ってたけど・・・。それは、おれがいおりに対して思っていることと全部同じだった。
おれは・・・・・・いおりと、ずーっと・・・いっしょに・・・。
「ゆうくん!」
「!」
ぐいっと腕を掴んだのは、息を切らして苦しそうないおりだった。
「・・・いおり・・・・・・。」
「・・・・・・。」
あの後、いおりはブツブツ文句を言いながら保育園の室内に連れていってくれた。
朝の挨拶のあとに外遊びの時間になると、
いおりは有無を言わさず、園庭にある物置の裏へおれを引きずっていった。
・・・・・・怖い。
今まで怒ると一番怖いと思っていた母ちゃんよりも怖い。
「あのさ、ゆうくん。」
「あ、ああ・・・・・・。」
怖いけど、強がるしかない。おれは強い男だから。
ガッ
「うお!?」
突然肩を掴まれたと思うと────
「なんでぼくのこと避けるの!?」
そこにはボロボロ涙をこぼして怒る、いおりの姿があった。
「・・・・・・ぇうあ!?」
やべえ、びっくりして変な声が出た。
・・・・・・え、なんで?
「・・・・・・お前こそ、なんで、泣いて・・・。」
「・・・・・・ゆうくん、ぼくと目が合ったら逃げたでしょ。」
「・・・いや、そんなこと・・・」
「ある!すっごく傷ついたんだよ!?それに、室内入ったらいないし・・・。ほんとに心配したんだよ・・・?」
「!」
心配・・・してくれてたのか。いつも泣かせてるから、嫌いだと思っていたのに・・・・・・。
「・・・・・・ごめん、な・・・。」
顔をのぞき込んでくる、レンズごしのキラキラした眼を見ると、素直に謝ることができた。
「・・・許さない!だから・・・これからは、ずーっとそばにいてね!」
「・・・・・・当たり前だろ!」
眉を寄せた顔からいたずらっぽい笑顔に変わったいおりに、また胸がぎゅーっと締めつけられた。
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