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「あ・・・。」
いつもと違う伊織の雰囲気と、予想もしなかった展開に、口をパクパクさせることしかできない。
「やっぱり、そうなんだ・・・。」
「・・・い、あ・・・。」
やばい、否定しないと。そうしないと・・・。
「多分、保育園の頃から・・・かな?」
この気持ちは・・・、知られても気持ち悪いだけなのに・・・。
「ふふ、青ざめてるね。気づいてないと思ってたの?」
俺は・・・ただ伊織の・・・。
「幼なじみ相手に、何年も片想いしてたんだね・・・。しかも、男。どんな気持ちなの?」
ただ、伊織のそばに・・・。
「・・・っ、あっ、うぐっ・・・。」
喧嘩で泣くことも殆ど無かったのに。こんな、こんな・・・。
「うっ、あ・・・、ごめっ・・・!」
涙がボロボロ止まらない。
胸の中は悲しいのか、悔しいのか、怖いのか、ぐちゃぐちゃになって分からないくらい混乱している。
「ごめっ、いお・・・。俺っ・・・!」
何故か、謝罪の言葉が溢れ出る。
今まで心の中を占めていた「好き」が「悲しみ」にすべて変わってしまったみたいだ。痛い。苦しい。たすけて。・・・・・・誰が?誰を?
「ごめん・・・っ、ごめん・・・。伊織、今まで・・・。」
傷ついていいのは俺じゃない。むしろ、今まで男の幼なじみに好かれていると分かっていて、好意的に接してくれたことを感謝すべきだ。・・・・・・頭の中では分かっていても、今はただただ膝を抱えて下を向き、顔を合わせないようにする事に必死になっていた。・・・最悪だ・・・。
「ねえ、ゆうくん。」
俺がしゃくり上げる程度まで治まったところで、伊織がまた声をかける。俺の名前を呼ぶ。それだけで俺の胸の中はまたぐちゃぐちゃになる。
「・・・・・・。」
「俺は、ゆうくんのこと、振ってあげない。」
「・・・。」
また、胸が痛んだ。今までとはまるっきり意味が異なるが。
・・・・・・今まで嘘で誤魔化してそばにいた罰、なんだろうか・・・。
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