春告鳥(上)

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 母さんは問いかけた。会話の続きらしい。 「博多弁ってどんな言葉があるの?」  春菜は口元に指をあてて、言った。 「そだねぇ、『しゃれとんしゃあ』とか分かるかな」 「しゃれとんしゃー」  ご当地戦隊ヒーローだろうか。 『福岡戦隊・シャレトンシャー!』  ……口に出したら怒られそうなのは確かである。 「正解は、お洒落だね。粋だねって意味。『その服しゃれとんしゃあ』とか言ったりするの」  三山家そろって、へぇ。戦隊ヒーローなどではなかった。飲みかけた味噌汁を改めてすする。その間に春菜は次のクイズを出す。 「これも意味は簡単な方だね、『つやつける』」 「つやつける?」  艶をつけるって事だろうか。福岡は工業もやっていると、小学校の授業で聞いたことが無くもない。おそらくニス塗り作業に使う言葉じゃないだろうか。 「塗装をする」  春菜は唇を尖らせた。 「ぶっぶー。そこまで限定されてませーん」  くっ……向こうに悪気はないのだろうが、なんか腹立つ。 「ワックスをつける?」  父さんが答える。 「ぶー。でも割と近いかも。古い方言だから、もっと広義な意味だと考えて」  塗装が違って、ワックスが近い、とな。  うぅむ、床磨きに精を出しているのか福岡県民は。 「あっ」  母さんが思いついたようで指を鳴らした。食事中だぞ。 「格好つける」 「…………」  春菜は黙り込んだ。  うん、どうしてそんな答えになった。 「マイちゃん正か~い!」  なんだと。  春菜が拍手を送る。 「つやをつける、ってのは見栄えをよくするって事でしょ? だからすなわち格好をつけるって意味なの」  言われてみると昭和のヤンキーがつやつやのリーゼントを整えながら、「俺、キマってるぜベイベー」とキメ顔をしているイメージが湧いてきた。  すまない福岡県民よ、床磨きなどと言う謎の趣味を持たせてしまって。
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