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「荷物ありがとう。
ごめんね、お盆に帰省出来なくて。
…………………………
ウン、タケノコの煮物はすぐ食べた方が良いのだね、わかった。
じゃあね、父ちゃんに宜しく言っておいて」
母ちゃんが送ってくれた箱の中から、トマトとキュウリにスイカを取り出し、冷蔵庫に押し込む。
冷蔵庫に入りきらないトマトとキュウリは、水を張ったボウルに氷と共に入れ、卓袱台の上に。
タッパーに入れられていた好物のタケノコの煮物も、昼飯のおかずとして卓袱台に置く。
冷やす必要が無い、茄子にジャガイモにトウモロコシは、箱に入れたままキッチンの隅へ。
昨日の残りの冷や飯と味噌汁で昼食の用意は整った、あ! 塩、キュウリに味噌も良いけど、俺は塩だな。
昼食を並べた卓袱台の前に座り、箸を握りついでにテレビのスイッチを点ける。
画面に映しだされたのは、帰省客でごった返す新幹線のホームで、マイクを持った記者が新幹線から降りてきた小さな男の子に、マイクを向けたところだった。
男の子が質問に答えようとしたとき、隣のホームから悲鳴と怒号が上がる。
カメラがそちらに向けられる、新幹線の幾つかの乗降口から乗客が争うように降りて来て、駅の出入り口に続く階段を駆け上って行く。
悲鳴と怒号を上げながら降りて来た乗客の後ろから、青白い顔の男女が数人覚束ない足取りでホームに降り、先を荒らそうように降車し階段に向けて走る人達を呆気にとられた顔で眺めていた、乗車の順番待ちの帰省客に掴みかかり、首筋や腕に噛みつき肉をかじりとる。
「(え!?何だ? 何が起こったのだ?)」
俺は何が起こったのか分からず、テレビの画面を凝視し続けていた。
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