第1章

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数百メートル先に見える高速道路上では、帰省する人達の車と街から逃げ出す人達の車でギッチリと埋まり、二進も三進も行かなくなっていた。 二進も三進も行かなくなった車の上を、車を捨て荷物や子供を抱え徒歩で逃げる人達と、その人達に這いずりながら近づき掴みかかる人達が見える。 「(こ、これは…………夢?)」 自分の頬を力一杯殴った。 「痛い! ゆ、夢じゃ無いのか…………。 ハ!? (そうだ、逃げなくちゃ)」 ベッドの上に放り出されていたジーンズに足を突っ込み、シャツに腕を通す。 「(財布に車のキーに通帳) あと何だ? (あ! 武器)」 ショルダーバッグに、着替えやその他の逃げ出した先で必要と思われる物を放り込み、武器になりそうな物を物色。 ギッチリの流しの下や戸棚や押し入れの中を覗き、武器になりそうな物を探す。 「(包丁しかないな、他に何か無いか? フライパン! これ武器になるかな?)」 キッチンや戸棚の戸の開け閉めの音に気が付いたのか、独り言を聞きつけたのか。 突然、通路に面した開けたままだった窓の格子の隙間から、青白い顔の女が唸り声を上げ腕を差し伸べて来た。 「ウガァァガァ」 「ヒィ」 通路にいるのは、格子の隙間から腕を差し伸べている女だけではないようで、玄関のドアが乱打される。 「(に、逃げなくちゃ。 玄関は駄目だ…………ベ、ベランダから)」 ベランダに走ろうとした俺の耳に、自室と隣の部屋を仕切るベランダの仕切り板が、乱打される音が響く。 「(あぁ、どうしょう?)」 俺は両手に包丁とフライパンを握り、オロオロと逃げ場所を探し、仕切り板を叩き割ってベランダから部屋に入って来た、青白い顔で呻き声を上げるお隣さんを迎え撃った。
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