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本当に悲しい時って
涙は出ないものなのだと祐介は初めて知った。
眠るように穏やかな表情。
声をかけたら
「何だよ、祐介」
そうやって少し垂れた目尻をさらに下げていつものように笑いかけてくれるんじゃないかって思う。
だけど握ったその手が握り返してくれることはもうない。
「ばーか」
絞り出した声は想像以上に小さくて誰の耳にも届かなかった。
「……ゆ、祐介っ………良平がっ…」
隣で肩を震わせ、泣きじゃくる沙那恵。
そっと肩を抱き寄せる。沙那恵は祐介の胸に顔を埋め、ただ泣き続けた。
俺、一生お前に勝てないじゃないか。
今日は4月1日。
いつもみたいに冗談だよって笑ってくれよ。
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