2 赤染めの水平線

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 ホウキとチリトリを片付けたところで、ちょうど音楽準備室から同じ班の女子達が出てきた。光希達の班は音楽室と音楽準備室の担当だったため、男女別で分担することにしていた。 「ちょっと男子っ。まさかサボったりなんかしてないよねー?」  気の強い笹岡(ささおか)麻耶(まや)が、光希達男子の一人一人と目を合わせる。 「そっち側、ずーっと騒がしかったんだけど?」 「サボってねーって! や、俺と淳はサボってたけど、鈴原はサボってなかったからっ!」 「はぁ? 何それっ。あんたと月村(つきむら)はサボってたんじゃん!」 「でも鈴原のお陰で音楽室はちゃんと綺麗になったし、別に結果オーライじゃね?」 「そういうことを言ってるんじゃないの! もー、隆平っていっつもこうなんだから……」  木山と笹岡がぎゃあぎゃあ言い合いながら音楽室を後にし、他の面々もそれに続く。  いつものように最後に音楽室から出た光希は、灯りを消し、扉も閉めた。  その間にも集団は消えていた。教室がある校舎への渡り廊下は階下にしかなく、音楽室は階段のすぐ隣に位置するため、早くも下の階に行ったようだ。  閉ざした扉の前で、光希は息を吐く。ほんの少し遠回りをしたくなって、階段ではなく長い廊下を歩いた。一人で歩く校内はいつだって自由だった。
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