2 赤染めの水平線

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「じゃあ俺も図書室に行くしかないか……帰りにでも寄って、勉強もそこでしていこうかな」 「えっ……勉強? ついこの間、試験が終わったばっかりなのに?」 「だって普段からやらないと身に付かないだろ」  自然な口調の本条に、光希の心はたじろぐ。  何故なら、光希が授業以外で教科書を開くのは、宿題を片付ける時か、それこそ試験前の一週間くらいのものだからだ。そんな中途半端な自分は、まるで本条とは別の世界の人間だと言われたような気がした。  渡り廊下を抜けてしまうと、教室は目と鼻の先にある。活気に満ちた騒々しさに、近付いていく。 「あっ! 凜、見っけっ」  教室の前に突っ立っていた木山が、本条を指して笑った。あっという間に駆け寄ってくると、彼は本条の肩を豪快に叩いた。 「遅かったなっ! いつもだったらもーちょい早く戻ってきてんのにっ」 「今日は机の汚れが酷かったんだ。なかなか消えなくて、それで時間がかかった」 「そっかー。凜は真面目だもんなー。俺なんか、ずーっと淳と遊んでたけどなっ」 「自信満々に言うな。それは俺が真面目なんじゃなくて、お前が不真面目すぎるんだろうが」  呆れたような本条の拳が、軽く木山の胸を押す。気軽な仕草に嫌悪感はない。  騒がしい木山と冷静な本条。明らかに属性が異なる二人は、意外なことに、教室ではいつも一緒にいる。  再び響いたチャイムの音を機に、光希はさりげなく二人から離れ、先に教室に入っていった。
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