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「お兄ちゃん、おかえりーっ!」
「わっ!」
リビングのドアを開けると、華奢な身体が光の速さで飛び付いてきた。避けられなかった光希は、強制的に小さな体温を胸に抱き止める。
「み、未鈴……ただいま」
「待ってたんだよっ! 今日も一緒に謎解きゲームの続きしよー」
「ああ、うん、解ったから……その前に部屋で着替えたいから、離れてくれないかな……」
「はーいっ」
光希がやんわりと頼むと、未鈴は素直に従った。にこにこと可愛らしく笑ったまま。
「ふふっ……未鈴ったら、いくつになってもお兄ちゃんっ子なんだから」
洗濯物を畳んでいた母親の綾子は、仲睦まじい子ども達に優しい眼差しを送る。
「もう中学生だっていうのに。そんな調子じゃいつまで経っても彼氏できないよー?」
「そんなのいらないもーんっ」
綾子がやんわりとからかうと、未鈴は小さく頬を膨らませ、ぷいっと顔を背けた。
春から制服を着るようになったばかりの未鈴は、思春期の女の子だというのに異性には関心を示さず、かと思えば一つ上の兄には子どもみたいに引っ付いてくる。
もちろん光希にとっても妹は可愛いが、正直もう少し遠慮してほしかった。他の家の兄妹と比べたら、恐らく自分達は距離感がなさすぎるだろう。
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