3 日常と悪夢

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 二人の亡骸を前にして、光希は胸が張り裂けそうに痛んだ。二度と両親に会えないことへの悲しみ以上に、その原因を作ってしまったことによる罪悪感のせいで。未鈴が泣き出さなかったら、自分がみっともなく泣き喚いていたかもしれない。  重い葬儀の後、光希と未鈴は共に母の親戚である綾子とその夫である雅之(まさゆき)に引き取られた。子どもを持てなかった綾子と雅之は、光希達を優しく迎え入れてくれた。  しばらくは実の両親のことが頭から離れなかったものの、養父母や友達は傍にいてくれた。彼らと過ごす時間のお陰で、光希は次第に悲しみを薄めていくことができた。  しかし悪夢は一度きりでは終わらなかった。  光希達を明るく励ましてくれていた幼馴染みの武志(たけし)君が、人通りの少ない細い道で、飲酒運転をしていた車にはねられて死んだ。  近所に住んでいた初恋相手のななちゃんが、公園の木から落ちて、その真下に転がっていた大きな石に頭を打ちつけて死んだ。  親戚の中で一番仲の良かった従兄弟(いとこ)(さとし)君が、雪の積もった冬の日に、急カーブのある凍結した坂道で、バイクに轢かれて死んだ。  お互いの家を行き来するほど打ち解け合った親友の(けん)君が、遠足で登った山の奥で、足を滑らせて転落死した。  両親の死を皮切りに、まるで呪われたかのように、身近な人の死が相次いだ。  そして、それを見ていたクラスメートの一人から、とうとう言われた。“死神”と。
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