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言った本人はほんの軽口のつもりだっただろうが、光希にとって、それはこの上なく自分にピッタリな汚名に思えた。誰かに心を寄せるたび、決まったように失っていく。理不尽な別れの繰り返しは、そんな戯言を鵜呑みにさせるほどに幼い心を疲弊させていた。
教室の真ん中でそう発言されて以来、気味悪がって、誰も光希の傍には近寄らなくなった。
光希の方も、彼らを引き留めようとはしなかった。最悪の形で失くすくらいなら、遠ざかってでも無事でいてくれた方がマシだった。
中学校に入ってからも、極力誰にも近付かないようにした。踏み込まれすぎないよう、誰に対しても一定の部分で均等に線を引いて、特定の友達を作らないでいた。
幸いイジメを仕掛けてくる輩はいない。同じ小学校出身のクラスメート何人かからは避けられている気配を感じるが、それが悪口や嫌がらせに繋がるようなことはなかった。
今の教室は居心地がいい。疎まれない程度の孤独は光希に安心感すら与えてくれた。薄情だが、誰に何が起きようが傷付かなくて済む。
常に気がかりなのは、義理の両親と妹だけ。
いつまで自分の影に隠れているつもりか知れない死神に、光希は何度も願う。もう放っておいてくれと。
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