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掃除に取りかからないクラスメートに対して、光希は何も思わなかった。下手に連帯感を持たれるよりは放っておかれる方が楽だ。
二人分の賑やかな声と、スピーカーを通して運ばれてくる旋律は、ほどよく耳を潤してくれる。
時計が掃除時間終了の五分前を指したところで、光希は身を屈めようとした。
しかし、伝わってきた軽い衝撃に阻止される。
「なー、鈴原! お前もやんねー?」
「え?」
にこやかに笑って近寄ってきた木山隆平に、肩をバンバン叩かれた。
「淳と黒板オセロやってんだけどさ、弱くて全っ然盛り上がんねーのっ。だから鈴原、相手してくんね?」
「でも、もう時間もないし、まだゴミが……」
「あー、了解っ」
目敏く察したらしい木山が、しゃがんでチリトリの柄を持ってくれた。
「こんくらい言ってくれりゃいいのに。ほら」
「あ……ありがとう」
光希がゴミを全てチリトリに乗せると、木山はそれをゴミ箱に持っていく。トントンと、淵を数回叩き、チリトリに貼り付く小さなカス達も丁寧に落とした。
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