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「《とりあえず・一瞬で・爆ぜろ》」
不意にルーン語で三節の奇妙な呪文を唱えた。
その刹那、耳をつく爆音が轟いて、視界を紅蓮の衝撃で埋め尽くす。セシルが唱えた呪文によって起動した魔術の爆風が、サーファを容赦なく吹き飛ばした。
その余波で高価な調度品が並んでいた豪華な食堂が、一瞬にして無惨に半壊した。
「ば、馬鹿かお前! 俺を殺す気か!?」
真っ黒焦げになっているサーファが床で、ごほごほと咳き込みわめき散らす。
当のセシルは苛つきを露にしたかのようなノリで。
「殺す? 違うぞ。ゴミを片付ける行為を掃除と言うんだぞ? サーファ」
「ゴミ扱いじゃなくせめて人間扱いしてくれ!」
口の減らないサーファに、セシルが肩を落としてため息をついた。
社会的負け犬当然としたサーファとは対照的に、セシルはいかにも超然とした女性だ。
外見は二十歳ほどだろうか。豪奢な赤髪、ぶどう酒を想起させる紫色の瞳。
その顔つきは思わず ぞっとするほど見目麗しく整っている。
女性らしく過不足ない完璧なプロモーションを誇り、身にまとう丈長の黒いドレス・ローブ。
セシルはどこか浮世離れした雰囲気の娘だ。
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