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「やれやれ、帰ったら婆さんに薬草を出してもらわんとな……」
少女は老人の指の様子を確認すると、周囲をきょろきょろと見渡す。誰もいないことを確かめ、老人へいたずらっぽく微笑みかける。
「内緒ですよ? お爺さん」
「……ん?」
首をかしげる老人の手を、少女は柔らかく取り、ルーン語で呪文を唱えた。
「《天使の癒しあれ》」
すると、老人の手を包む少女の手が淡く発光し、光に包まれた老人の手の怪我がみるみるうちに癒されていく。
光属性に分類する魔術。被術者の自己治癒能力を高めて傷を癒す白魔術だ。
「……お、おぉ……!?」
老人はその様子を、目を丸くして見つめていた。
「うん。それから……《火の仔よ・指先に小さき焔・灯すべし》」
少女は次に、火の属性に分類する赤魔術の呪文を唱えた。
すると少女の指先に小さな炎が灯る。その小さな炎を金属のバケツの中へ落とすと、中に入っていたごみが、めらめらと燃えていく。
「お嬢ちゃん……今の不思議な力……話に聞く魔術ってやつかい?」
「はい。本当は学院外で魔術を使ったら罰則があるんですけどね」
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