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「それにしても、珍しいね。リュゼが忘れ物するなんて」
老人と別れ、友人と合流した少女――レイナは隣を歩く友人を不思議そうに見つめた。
「そのせいで屋敷まで往復することになって、貴女まで待たせて……本当にごめん」
レイナの隣で少し肩を落として、とぼとぼと歩く少女――リュゼは憂鬱そうにため息をついていた。
リュゼは純銅を溶かし流したような赤髪のロングヘアと、やや吊り気味な紫水晶色の瞳が特徴的な、レイナと同い年くらいの少女である。
「ひょっとして……リュゼ、やっぱり……あのことが響いてる?」
レイナが心配そうにリュゼの顔をのぞき込む。レイナが知るリュゼは、忘れ物をしてしまうなどという隙とは無縁の存在なのだ……基本的には。
「かも、……ね」
親友に心配かけまい、とリュゼは健気に笑みを作って応じる。だが、どうにも消せない憂鬱さが表情の端々に残っていた。
「やっぱり、残念でさ……ロラン先生、なんで急に講師を辞めちゃったのかなぁ?」
「仕方ないよ。先生にだって色々と都合があるもの」
「あぁ、惜しいなぁ……ロラン先生の授業分かりやすく質問も答えてくれたのに」
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