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ロランという教師はレイナやリュゼたげでなく、生徒から信頼をされていた。
「あ、そうそう、リュゼ。話は変わるけど、今日、代わりの人が非常勤講師として来るみたいだよ?」
「……知ってるわ」
いかにも興味なさそうにリュゼは応じた。
「せめてロラン先生の半分くらいは良い授業してくれるといいんだけど」
「そうだよね。ロラン先生の授業に慣れちゃうと、他の講師の方の授業じゃちょっと足りない気がするよね」
二人がそんな会話を交えながら、十字路に差し掛かった時だ。
「遅刻、遅刻だぁああああ!?」
修羅のような表情で口にパンをくわえた不審極まりない男が、左手の通路から二人を目掛けて猛然と走って来た。
「……え?」
「きゃあっ!?」
「ちょ、ちょっとそこ退いてくれッ!」
左手の通路は下り坂。勢いのついた物体は急に止まれない。そんな古典物理法則を正しく踏襲し、男が二人のいたいけな少女を轢き飛ばそうとしていた――その時。
「お、〈大いなる風よ〉――ッ!」
リュゼがとっさに一節詠唱で、風属性に分類した緑魔術の呪文を整えた。
瞬時にその手から巻き起こる猛烈な突風が男の身体をなぐりつけるようにかっさらう。
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