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そして――。
「あ、あれ――ッ!? 俺、空飛んで――って!?」
男の身体は天高く空を舞い――放物線を描いて通りの向こうにあった円形の噴水の中へ落下した。
遠くで盛大に上がる水柱を、二人の少女は遠巻きに呆然と眺めるしかなかった。
「あの、ねリュゼ? ……やりすぎじゃない?」
「そ、そうね……あはは……つい。どうしよう?」
二人の視線を受けながら男は無言で立ち上がり、ばしゃばしゃと水を蹴りながら噴水から這い出る。そして、つかつかと二人の前まで歩み寄って言った。
「大丈夫か、お嬢さん達……」
「いや、貴方が大丈夫?」
男は爽やかな笑みを浮かべて精一杯決めているつもりなのだろうが、哀しいほどに顔がひきつって決まっていない。
妙な男だった。リュゼ達よりも、幾ばくか年上の青年だ。黒髪黒い瞳、長身痩躯。容姿そのものに特筆する所はないが、問題はその出で立ちだろう。
仕立ての良いホワイトシャツに、クラバット、黒のスラックス。
かなり洒落た衣装に身を包んでいる。けれど、この男はこの服を着るのがどれほど焦ったのか、気崩しならまだしもところどころシワが目立つ。
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