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しかし、その全身から醸し出される風格は高貴な貴族のそれで、さらにいえば二人が住む、貴族屋敷の主人もセシルでありサーファは単なる居候に過ぎない。
二人の社会的地位の格差は素人目にも歴然としていた。
「それはともかく、なぁ、サーファ……お前、いい加減仕事探さないか?」
セシルは紫色の瞳で、真っ直ぐサーファを見下ろしながら言う。
よろよろ起き上がろうとしていたサーファの動きが一瞬停止する。
「お前が前職を辞めて、私の家の居候になってから早二年。毎日毎日、食って寝て、食って寝て、ただ家に引きこもるばかりじゃないか」
ため息交じりのセシルに、サーファはどこか自慢気に応じた。
「外に出たところで社会の歯車がどう動こうと俺には関係ない」
「関係なくはないだろう。頼むから、引きこもりの生活から脱しろ」
爽やかな笑顔を見せるサーファに、もはやセシルは呆れるしかない。
「まったくお前という奴は……昔のよしみで面倒を見てやっている私の身にもなってくれ」
「お前だからここまで気を許しているんだ。まぁ、俺とお前の仲だからな」
「《摂理の円環へと帰還せし者・五素は五素に・象と理を……」
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