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流石にキレたらしい。セシルは据わった目で何やら物騒な呪文を唱え始める。
「ちょ!? それ、〈イシクレイション・ゾーン〉の呪文じゃねえか!? ま、待てって!? 無抵抗の人間に使うつもりか!」
構築していく魔術の詠唱にサーファは後退りし、焼け焦げた壁を背に悲鳴を上げた。
セシルはそんな情けないことこの上ないサーファの姿を前に、直接手を下すのもアホらしいとばかりに起動しかけていた魔術を解除した。
「まぁ、いい。お前ごときを魔術で処分するなんてそれを魔術に対する冒涜だからな」
「冒涜ねぇ……」
どっと疲れたように、セシルはがくんと頭を垂れる。
「とにかくだ。そろそろお前も前に進むべきだと思う。いつまでもこうして時間を無駄にし続けるわけにもいくまい? お前自身も本当はわかっているんだろう?」
今度ばかりは流石のサーファも聞き流せない。セシルが本気で自分のことを心配してくれているとわかるからだ。
「そうは言うが、なぁ……一体どうすればいい?」
「お前がそう言うだろうと、私がお前に仕事を斡旋してやろう」
「仕事?」
サーファの胸に嫌な予感がよぎる。
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