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荘厳かつ勇壮な姿を誇るその古城の名は『ニルヴァーナスの天空城』――この都市ヒヒロクの象徴である。
近付くことも触れることも叶わぬ、なにゆえその城が空にあって、いつからそこに見えていたのかもはっきりしない、幻影の城。
「無理? なぜだ? サーファ」
「無理だろ。だって俺――人嫌いじゃん。魔術学院ってもう人がうじゃうじゃいるところに俺を放り込むとか……地獄じゃないか!」
そう語るサーファの顔は血の気を失い、肩が小刻みに震え拒否の色が色濃く出ていた。
「だからといってお前の人嫌いが直らなくなるからな。ここは、私の地位と権限でどうとでもなる」
「ちょ、拒否権はないのか! 職権乱用かよ!?」
「魔術講師としてのお前の能力に問題ないはずだ。お前だって昔はそれなりに魔術をかじってたんだからな」
「ご丁重にお断りします」
地獄に見投げせず自分の身をあえて守る道を選んだサーファ。
「この上なく引きこもるつもりか。心底、死ねと思った」
ぴきぴき、とセシルのこめかみに青筋が走る。忍耐の限界も近そうであった。
「ちなみに、お前の拒否権はないからな」
引きつった微笑と共にセシルが言い放つ。
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