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「……サーファ」
「とにかく俺は絶対嫌なんだ! 金輪際、二度と魔術なんてものに関わらないからな!」
「《其れは摂理の円環へ帰還せよ・五大素は五大素に・象と理を描く縁を乖離せよ》
セシルが口早に呪文を紡いだ刹那、サーファの傍らを光の波動が駆け抜け、何かが空間へ吸い込まれるような音が壮絶に響き渡った。
サーファが波動の駆け抜けていった方向を見ると、己のすぐ横の壁になめらかな切断面の円形の大穴が空いていた。
明らかに物理的な破壊の結果や類いではない。
言うなれば、消滅とでも表現するしかない超常的な現象――魔術の為せる業でもあった。
「ち……狙いが甘かったか」
口を金魚のようにぱくぱくさせて硬直するサーファに、セシルは据わった目と掌を向けた。
「次は外さん……《其れは摂理の円環へ帰還せよ・五大素は五大素に……」
「わ、わかったから打つなーッ! やってやるからそれだけはぁあああああ――ッ!?」
こうして、半ば強制的にサーファの再就職先は決まったのであった。
サーファが二年ぶりに手にした職は、栄えあるイシュガーノ帝国魔術学院の非常勤講師。
一ヶ月という期間限定のなんとも将来性に不安を残す職だった。
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