届いたものは

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よく聞き取れない。 聞き取れないけど……言葉の切れっ端をつなげて理解したのは、優子の病気も、余命も、本当の話だということ。 そして優子が、そんな体だというのに、居場所も告げず行方不明だということ。 「あんたには……なかなか連絡がつかんで、まだ直接は言えとらんちゅうとった……突然余命なんか宣告されて、あんたにはすげなくされて……優子は……優子は……」 最後は切れ切れに、泣きながら俺を責める声は、既に憔悴仕切っていた。後ろで聞こえるお袋さんの嗚咽と優子を呼ぶ声が、酷く耳に残る。優子の声に、凄く似ている声だった。 あれから、半年が経った。 俺は、まだ優子を探している。優子の死なんて考えたくもない。余命宣告よりも長く生きる人だっているんだから。 探偵も雇ったし、貼り紙もネットも思いつく事はなんだってやった。それでも手がかりは欠片も得られない。親御さんが出した捜索願でも、いまだ有力な情報は得られていないらしい。 今でも休日の度に街に出る。 あいつが働いていた会社の前、あいつの住んでた街、好きだと言ってた本屋…懐かしくなって、ふらりと来たりしないだろうか。 会えたなら、まずは今までの事を謝ろう。この指輪をもう一度渡して、そして今度こそちゃんと言うんだ。 「好きだ。結婚しよう」って。
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