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「ああ、そうそう。遅くなっちゃったねぇ・・・。」
なにやらブツブツ呟き始める。何だ、これ?聞き覚えがあるような・・・。
「!」
眩いほどの光を放ったかと思うと、魔王?はシンプルな普段着風の服装から、漆黒のマントとスーツ、全身真っ黒な装いに変わった。
・・・・・・先程までと違い、一気に「魔王らしさ」が出たというかなんというか、言っていたことの説得力が増すから不思議なものだ。
見た目が9割って本当なんだな。
そうやって失礼なことを考えていると・・・。
「じゃ、ちょっと失礼するねっ、と。」
「!?」
多分魔王であろうシグルドは、額と額を突き合わせてきた。・・・・・・「こっつんこ」という状態だ。
「・・・・・・ぇあ!?」
「あれ?顔赤くしてどうしたの?」
「は、いや、だって・・・!」
シグルドが話す度に、唇に生暖かい息が当たる。ううっ、なんで平然としてんだよ!
あっ、もしかして・・・・・・。
「おま、・・・シグルド、さん。その・・・ソッチ系、なのか?」
「?ソッチ系?アッチとかソッチとかはよく分からないけれど、多分君が思っていることは違わないんじゃないのかな?」
「合ってるのかよ!・・・・・・え、てことは・・・・・・。」
今の情報とこの状態から考えられることなんて一つしかない。顔からサッと血の気が引いた。
「お、俺はそういうのに偏見は無い方だけどなあ!・・・・・・出会って間もないのにこんなことするのはどうかと・・・!」
力の限りつき飛ばそうとすると・・・
「おっと危ない。」
「!」
片手で抑えられてしまった。色白な細腕からは想像もつかないほどの強さだ。びくともしない。・・・・・・いや嘘だろ?少なくともここまでの旅路で常人並・・・いや、魔王城の近くの森の、恐らくラスボス手前ぐらいの魔物たちに楽々勝てるくらいには鍛えたんだぞ?それなのに・・・。
「あ・・・・・・。な・・・・・・。」
「ん?あな?どうしたの?」
ニコニコ笑ってやがる。こいつは・・・もしかしたらほんとに・・・。
「魔王・・・なのか?」
「さっき名乗ったじゃーん。」
やはりニコニコしながらシグルドは言った。
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