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「それより。」
驚いている俺を気にせず、先ほどつき飛ばそうとした腕を掴んだまま、シグルドは距離を詰めた。
・・・・・・だから、唇が当たりそうになってるだろ!
内心そう思いつつ、力では敵わないと分かった俺は身を委ねることにした。
「せ、せめて優しく・・・。」
ううっ、初めてが男なのか・・・。前世でも経験なんてないまま終わったのに・・・。しかし、一応男。漢。覚悟して目をつぶる。
「うん、優しくするよー?」
そう言って、魔王は優しく優しく────
「キュア。半径・・・余裕をもって2m以内を対象に。」
────回復魔法をかけた。
「・・・・・・え?は?」
「はい、終わったよー。希望通り、できるだけ優しそうな感じで唱えたけど・・・。」
あっけにとられている俺をよそに、魔王は部屋から出ていこうとする。
・・・・・・えっ!?
「その、回復魔法だったのか?」
慌ててベッドを降りて引き留める。
「・・・それ以外に何があるのかな?・・・・・・もしかして・・・。」
急にニヤニヤした嫌な感じの笑い方に変わる。うわっ、コイツ絶対分かってやがる!
「い、いや・・・・・・。別に・・・?」
「ふーん・・・。ま、いーけどね。」
平静を装うと、それ以上追及されることは無かった。・・・・・・あー、良かった。
「ベッドから起きられたみたいだけど・・・、やっぱり白魔法効いたみたいだね。」
「へ?・・・・・・ああ、頭の痛みもなくなってる・・・。」
どうやらさっきの魔法が効いたみたいだ。でも、そうすると疑問が残る。
魔王としては、俺を城に招き入れて、意識が戻らない間に殺した方が早かったんじゃないのか・・・?
「・・・・・・何か考え事してるみたいだけど・・・、とりあえず元気なら大丈夫だね。」
「?ああ・・・。・・・・・・って、うおっ!?」
突然腕を掴まれたかと思うと、視界が真っ暗になった・・・。
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