13 願いは届く…

3/16
前へ
/165ページ
次へ
ジンの持てる全ての力を込めた1発に、 水嶋の体は宙を舞い、 靴箱に背中からぶつかり崩れ落ちた。 靴箱が音を立て大きく揺れた。 いくつかの靴が、床に倒れ込んで 手を付いた水嶋に落ちてきた。 「…まえーー アヤに何、するんだー」 苛立ち興奮し怒鳴るジンの横を抜け、 木下が水嶋に駆け寄る。 小さな声で大丈夫か、と聞く。 肩で息をし、怒りが収まらないジンは水嶋に詰め寄り、 掴み掛かろとする。 『…やめろ』 アヤは怒鳴りジンの後ろから腕ごと押さえ込んだ。 木下はジンの前に立ちはだかる。 水嶋は木下の腕を掴み体を起こす。 座り込んだまま、ジンを見上げ、 『…石森 お前がいつまでも綾瀬を放っておくからだ、オレが貰って 何が悪いんだー』 「…っ…にー  貰う……ざけるな!! アヤは渡さねーっ!」 『はぁー?! 渡さない… お前のモノじゃないだろ!  オレは綾瀬が好きだ!!  石森、お前は、どうなんだ? 好きなのか? ただの幼なじみじゃなのか?』 ジンはグッと奥歯を噛む…  右手の握り拳に力が入ったのを感じながら、 そして、言い放つ。 「オレらは幼なじみだ、小さい時からアヤをずーっと見てきた。かけがえのない幼なじみだ!!」 アヤは黙ったままジンを見つめる。 幼なじみの言葉に胸が小さく痛む。 「ぉ…オレは幼なじみだけど……… 好きだ、アヤが、…だ、大好きだ!…悪いか!」 アヤは、その言葉に目を瞑り、 ジンは、自分の発する言葉に、 目の奥が…  鼻の奥が… ツーンっと痛くなる。 『…なら、なんで? 綾瀬を放っておくんだ ちゃんと捕まえておけよ』 「 … 」 ジンは握り拳に更に力を入れ、ギュッっと強く握る。 お前に言われなくたってって拳に力が入る。 ただ、放って置いた訳じゃない、 もう、放って置ける状態じゃない。 ジンは唇を強く噛んだ。 アヤが好きで好きで、 どうしようもなく好きで…涙が流れた。 下校時間の昇降口。 この靴箱を使っている、1、2年の生徒達が、 この騒動を見ていた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

363人が本棚に入れています
本棚に追加