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見たこともないくらいの、大きな魚が跳ね上がっていた。
色や形だけ見たらそれは鯉だ。でも、立ち尽くす男よりさらに巨大な鯉なんているのか?
跳ね上がった鯉らしき魚の口がぱくぱくと動く。餌を求めて水面に浮いて来た時のあの動きだ。
その動作が見えた直後、まるで吸い寄せられるように男の体が宙に舞った。
巨大な鯉が男を飲み込む。そしてもう一度大きな水音を立て、池の中に消えて行った。
あんなバカデカい鯉、見たことない。この池にはあんなのがいるのか? というか、あの警告看板の真意は今の光景か?
池の淵はあの巨体には浅すぎて、餌を求めても寄っては来れない。だから、橋の上からの餌を待つ。撒かれる小さな食材ではなく、それを撒きに来た大きな餌を待っている…?
震える足で俺は橋を渡らず引き返した。
俺はもう、池の淵で鯉に餌をやることも、この橋を渡ることも…いや、公園に来ることすらないだろう。
鯉の棲む池…完
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