第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
私は国会議員だ、当選回数は連続15回、与党の議員の中でもベテランと言えた。 今日も私の所に大企業の役員が陳情に訪れる。 「先生! この法案は必ず通してください。 お願いします」 「任せておきたまえ。 ただし! 私の地盤に工場を建ててもらうよ」 「分かっています」 うんうん、今度の選挙も安泰だな。 翌日、生まれ故郷で選挙の地盤にある、選挙事務所に顔を出す。 後援会の人達が作成した選挙名簿を眺めていた私の耳に、事務所の扉が開かれた音が聞こえた。 名簿から顔を上げ扉の方を見る。 私は持っていた名簿を机の上に置き、入って来た人の下に歩み寄り、最敬礼の挨拶をした。 「先生お久しぶりです」 「元気かい?」 「はい、おかげさまで元気です」 私はこの先生にだけは勝てない。 この先生のおかげで貧乏人の小倅だった私が、高校を無事に卒業する事ができ、大学に進学が叶い、今こうして、国会議員を務める事が出来るのだから。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加