手の温もり

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「そう、でも子供が出来たらきっと沢山お金がいるから、やはり私働くわ」とりさ子は健気に言う。 小西は、一言「すまない」とだけ言うと俯いてしまった。 小西は暗い世界でこれから生まれてくる自分の子供のことを想った。 顔を見る事が出来ないんだと。 目を失うと言う事は大切なものが見えなくなるんだなと心の中で思っていた。 なんてことだ。 私はこれからりさ子に負担をかけながら生きていかなければならないのか。 そう思うと小西の気持ちは暗く沈み不安が広がっていくのだった。 りさ子は元ピアノの教師をしていた。 子供をお腹に抱えながら自宅のグランドピアノを使ってピアノ教室をやっていく事にした。 明るい性格のりさ子は、笑顔を絶やさないようにした。 その笑顔を小西は見ることは出来ない。 けれどりさ子は、小西に向かって微笑んでいた。 小西は、暗い世界でりさ子の声と優しい手にすくわれながら生きていた。
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