降る時を知り

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 「仕事はどうするつもり?」  「明日から2週間引き継ぎをしたら、有給消化を2週間。」  「そしたら、ゴールデンウィークだ!」  「今年のゴールデンウィークは、1カ月のロングバケーションになったのさ。」  「よく思いきれたわね?」  「あと5年頑張って、早期退職制度を使うんじゃなかったの?」  「わはは、そうだった!忘れていたよ!」  勿論忘れてなどいなかった。佐和子がいなくなった街で5年間も暮らす気になれなくなってしまっていたのだ。  退職金の僅かな差額など会社にくれてやる。今はこの5年を彼女のために使おう。心からそう思う。少しでも彼女に罪滅ぼしができるならどんなにか幸せだろう。  佐和子は太一に抱かれながら故郷の川を思っていた。丁度今頃は、冷たく、澄んだ雪解け水が流れている。ほとりの花達は東北の遅い春を待ちわびている。やっと訪れた春に、皆が一斉に花を咲かせるのである。一年で一番華やかで美しい時季だ。
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