君の涙が僕を捉えて放さない

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「ああ、とうとう降って来ちゃいましたね」 小澤部長の親戚の娘だという彼女ー雨宮凜音(アマミヤリオン)ーと連れ立って歩きながら、ため息を押し殺しどんよりとした空を見上げた自分の顔をめがけて一粒二粒と雨が落ちて来た。 斜め後ろで「あ、私、折り畳み傘持ってますから」と慌てた彼女の声が聞こえる。 傘を広げてこちらに差しかけようとする彼女。 それを手で制する。 「いや、それを二人でさすのは無理ですよ。 大した降りじゃないし、申し訳ないけど、ここで失礼してもいいですか。 駅まで送るはずでしたが、会社に戻って仕事の続きをしたいんで…」 「あ、あの、申し訳ありませんでした。 お忙しいのに付き合って頂いて。 一人で大丈夫だと言ったんですけど、おじ様が……」 部長と食事の約束をしたからと彼女が会社にやって来た時、当の部長は得意先との商談絡みのランチに出掛けるところだった。 部長から呼び出されて進捗状況を報告していた所を運悪く捕まったのだが…… 本当に運悪くか? 食事中もそんな疑問が頭から離れなかった。
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