紫じみた空

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紫じみた空

ゼミの教室に行くとほとんどの人がもうそろっていた。 今日は、授業後に懇親会のような飲み会が予定されていた。 本当は、奏太にまた嫌な思いをさせてしまうと思い、行かないつもりだったけれど、奏太に話したら思いのほか寛容に行ってもいいと言われたので行く事にした。 彼自身大学時代にゼミでお世話になった人が多かったようでゼミに対する考えは他のことよりも優しかった。 私は、奏太に言われなくても飲み会という場が嫌いなので行きたくないのが本音だった。 だけどせっかく奏太が行ってもいいと言ってくれたその気持ちを無碍にしてまで私は自分のエゴを通したいのかと改めて自己嫌悪に陥りそうになったから、行く事を決意した。 先輩の多いゼミは、毎週何かしら傷つくのではないかとびくびくしていて今回の飲み会も本当に怖かった。 会場に着くと私は同じ学年の女の子に囲まれて座った。 女から受ける傷と男から付けられる傷はまったく威力が違うといつも感じる。 女は、自分も女だからどうしてそうやって傷つけようとしたのかとか、だいたいわかるけれど、男の場合、突然意図しない傷を与えてくることが多い。 それってどうなの、どうしてなの、ともう関わる事すらしたくないほど男に対する恐怖心が湧いていた。 奏太だけは、体に傷をつけることはあっても、突然心に傷をつけようとなんてしてこないのはわかっているからそばにいることで安堵感を得られる。 女の子に囲まれて、私は安心しきっていた。 普段こうした飲み会に参加しない私は、どのお酒を飲んだらいいのかわからず、女の子たちと同じものを頼んだ。 普段だったら絶対に口に出せないような名前をすらすらとまるで別人のように話す自分を、上から見下ろしているかのような感覚になった。 「普段どんな音楽聴くの?」 「北欧系かな。あ、こないだ言ってたアーティストもすごい良かった。」 隣に座る女の子がにこにこと話している。 その笑顔はいつ見ても可愛い物で、どうやって育ったらそんなにも純真な笑顔を見せられるのだろうとまじまじと見つめてしまった。
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