紫じみた空

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そのテーブルにいるのは辛くなり、少し離れたところに座りぼーっとしていた。 すると、他の男の子が話しかけにきた。 もちろん、これ以上男と話すなんて嫌だったし、きっとまた傷を増やされるだけだと思い警戒しきっていた。 彼が近寄って来るのは、目の端に映っていたその動きで分かっていたけれど、できるだけ気づかないふりをしていた。 私は話す気なんてない、私と話してもつまらないですよ、という空気を出すように彼の視線を無視していた。 けれど、彼はそんな態度に気づきながら、近寄り話しかけて来た。 ーーーーーーーー 過去に戻れるとして、どこの時点に戻れば私は人生を納得のいくものにやり直すことができるのだろうか。 あのときこっちじゃない選択肢を選んでいたら、あそこであれをしていたら、とかいろいろ今になって思うことはたくさんある。 だけど、今あのとき選んだことから私があるとして、もし違う選択肢を選んだ私と比べて、今の方がマシなのだとしたら? 比べようがないから、私自身、今の自分を底辺だと思ってしまうのだけど。 他人の人生と比べずに生きていこうと世の中では唱われているけれど、そんなのこんな時代でほとんど不可能だと思う。 すべての繋がりを断って、直接的な接触しかもたないようにしなければ、ほぼ毎日他人に対する情報が更新されていく。 それは、知ろうとせずとも目につくものだ。 だから、彼と出会って初めてどこにも情報を出していない人ってほんとうにいるのか、と驚いた。ふざけて、 「誰かに狙われてるの?もしかして諜報員?」 と聞いたら、 「スパイ映画の見過ぎだよ」と言われた。 「俺は、意図していないのに誰かに俺のことを知られるのが嫌なんだ。名前だけならまだしも、どう感じたかとか、何が好きか、とか。そういうのは、こうやって知り合って対話を重ねて知っていけばいいと思ってる。写真だって不特定多数の人に見られるのってなんか怖いよ。古くさい考えだとは思うけどね。」
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