紫じみた空

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私が彼と普通に話せているのは彼のそういうところからくる平等さを感じさせる雰囲気のおかげかもしれない。 彼自身、誰かの情報を知ろうとするとき、やっぱり直接聞いたりする程度だから、人の話を熱心に聞いてくれる。 そして絶対に忘れまいとしてくれる。 誰かから名前や特徴を忘れられることはもう慣れたし、誰かの記憶に留まり続けるのは苦手だから、それでいいと傷つかないようにしていたけれど、彼のように忘れないようにしてくれる人がいるというのは私をとても安心させた。 そう、あの飲み会で話しかけて来た彼は、あのとき一ミリも私を傷つけずに話をしてくれたのだ。 視線を無視し続けた私に彼は、 「ここ、暑いね。」と話しかけて来た。 そんな話しかけられ方をしたのは初めてだったから思わず笑いそうになってしまった。 だけど彼は、笑いそうになった私に、何で笑ってるの?なんて聞かなかった。 「お酒、あんまり強くないの?ジュース取ってこようか?」 「いや、いいよ。もうこれ以上飲まないから。」 私は最初の一杯をずっと手にしていて、移動してからはコーラを頼んでいた。人前で酔うのが嫌なのだ。 「そっか。」
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