紫じみた空

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行きとは違い、帰りは軽い足取りで帰宅した。 リビングにいた奏太は、私が「ただいま」と言っても返事をしなかった。不信に思って急いで部屋まで行くと奏太はこちらをじっと見つめていた。 「奏太、ただいま。」 「…。おかえり。楽しかったみたいだね。」 今までにも何度か聞いた事のある、怒っているとき特有の冷たい声だった。 「別に、普通だよ。私、飲み会とか好きじゃないし。」 奏太がソファからこちらを見上げる。その目は黒く光っていた。 「ふーん。でも、楽しかったって顔してる。俺は関係ないけど。」 そう言って寝室へ向かう奏太を追いかけ彼の服を掴んだ。 「ねえ。待ってよ。何で怒ってるの?奏太だって行った方が良いって言ったから、私飲み会とか嫌いだけど行ったんだよ?そんなに楽しいわけないじゃん。怒らないでよ。頑張ってこなしてきて、やっとうちに帰ってきて奏太の顔見てほっとしたのに。」 奏太は足を止めた。私はやっと彼が機嫌を直してくれたのだと思った。 だけど、振り向いた彼の顔はひどくこわばっていた。
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